モスクワ留学体験記

露文教員の坂庭です。現在モスクワ大学に留学中の露文3年生、末岡佳奈子さんがレポートを送ってきてくれましたので掲載します。

私のモスクワ留学(約3カ月経ってみて)

9月中旬に私のモスクワ大学での留学生活が始まり、すでに3カ月経とうとしています。今ではだいぶ、ロシア文字やロシア語での喧騒に囲まれたこちらの生活にも慣れ、落ち着いた生活を送れています。そしてこの約3カ月の生活の中でもう何度も、良い意味でも悪い意味でも「想像以上」のことを体験しているように思います。

モスクワはご存じの通り大国ロシアの首都であり、世界有数の大都市です。ソ連が崩壊して20年経ちますが、ここ数年でモスクワはかなり急速に西欧化しているようで、それを肌で感じることが多々あります。まず物価の高さ。東京もなかなかだと思っていましたが、モスクワはそれと同等、ものによってはそれ以上の場合が多いです。大きなショッピングセンターに行けば多くの海外ブランド(特にスペインのファッションブランド「ZARA」の多さには目をみはるものがあります)が立ち並び、若い男性や女性はとてもおしゃれな格好をして買い物を楽しんでいます。ファストフードの品質も期待以上、至る所にある「СУШИ(スシ)」の文字、交通機関の運賃の安さ…初めてのロシアということで先入観だらけだった私は、街に繰り出すたび様々なことに衝撃を受けていました。もちろんそれは2カ月以上たった今でも続いています。
ロシアの面白いところは、そのような近代的な風景から少し離れると、未だにソ連時代っぽさを残しているところが多くあることです。例えば交通機関にしても、メトロの駅はもちろん、車両は古いものを使い続けているし、エスカレーターは手を置くベルトと足元の早さが違う、などなど。それ以外にも、メトロの駅構内や車内でお金を恵んでもらおうとする人がしばしば見られます。とある銀行に行けば、日本のように整理券を自動的に発行する機械が導入されていないために、たくさんいる順番待ちの人(もちろん列になっているわけもなく)に「○番窓口の最後の人は誰ですか」と聞いて自分の順番を把握する、という手順を踏まなければなりません。本当にひどい混雑の時は、先に並んでいた人たち自身が、だれが最後だかわからなくなり、どちらが先かで喧嘩になっているところも見ました。私が行った銀行がそうだっただけかもしれませんが、日本ではなかなか見られない光景でしょう。
そしてロシア人の文化水準の高さにも驚いています。ロシア演劇の質の高さは有名ですが、モスクワの街のあちこちに、それぞれの特色をもった劇場があります。私も友人と一緒に何度か観劇、オペラ鑑賞に行きましたが、平日でもまさに老若男女のお客さんでいっぱいで、ロシアにおいて演劇やオペラなどは日本における「映画」と同じような位置づけなのだと感じました。つい先日ボリショイ劇場が改修を終えリニューアルオープンしたようなので、近いうちに本場のバレエも観てみたいと思っています。

大学生活はというと、週4日計10コマの授業を受けながら、平日は毎日大量の宿題にいそしむ日々です。授業は外国人向けのロシア語のコースで、文法、発音、購読、文化などの必修を始め、私は他にもロシア・アヴァンギャルドなどについてのいくつかのセミナールを履修しています。もちろん授業はすべてロシア語で行われますが、初めは先生が言っていることを聞きとるのにも一苦労でした。今も曖昧に理解している部分はありますが、それでもこちらに来た当初に比べるとましになったように思います。
大学での生活を通して学ぶことはロシア語の知識だけではありません。こちらの大学側の対応は、日本のそれと比べるとお世辞にも「親切」とは言えません。時間割がコロコロ変わったり、試験時期が直前になるまでわからなかったり…。手続き1つするにしても、色々な部署をたらい回しにされ、ほとんど半日、あるいはそれ以上の時間をかけなくてはならず、まるでロールプレイングゲームのようです。そこで大切になるのは自分からどんどん尋ねに行ったり、自分の意見を主張したりする「積極性」です。日本ではつい様々なことに対して受け身になりがちですが、こちらに来てからというもの、理不尽なことに対してはまず自分の意見を主張するということが当たり前になってきている気がしています。(反撃は相手にされないことも多いですが、たまに聞きいれられたときには小さな感動があります!)
また、こういったことや、ロシア人の友達と会話することを通して、自分の言いたいことをロシア語で表現しきれないことがしばしばあり、そのたびに私の語学力が未熟なものであることを痛感しています。もちろん、「こちらにきてここが成長したな」と思うこともあるのですが、それよりも「まだまだだめだ」と思うことの方が圧倒的に多いです。「もう3カ月」なのか「まだ3カ月」なのか――いずれにせよ、これからもこちらでの1日1日はまさに矢のごとく過ぎ去っていきます。そして留学生活は常に「焦り」との隣り合わせのように感じます。今日までの日々で何が変わったか、何を得られたかを自問自答する毎日です。
今年は暖冬のようで、気温は氷点下になる日が増えましたが、12月に入った今でもまだ本格的な積雪を見ていません。これから今の気温よりも10度以上下がる、という本物の冬の到来に怯えながら、あと約7カ月私のモスクワでの生活は続きます。

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