インタビュー第2回・IHI副社長 昼間祐治さん<1>

昼間祐治さん(62)
露文卒業生。世界をリードする重工業メーカー「株式会社IHI」で
「副社長執行役員営業・グローバル戦略本部長、副社長」を勤める。
今回のインタビューではご自身のご経験談を交えつつ、
学生達に向けてのメッセージを語って頂きました。



■大学は自分がどこまで勉強できるかを試す最後のチャンス


—-まずは学生時代のお話をお伺いしてもよろしいでしょうか。

実は私は絵を描いていてずっと美大を受けるつもりだったので、大学に入るのが少し遅れたんです。でも絵というのはかなり才能という部分が必要だったんですね。高校時代からずっと絵を描いていたんですが、もう潮時だと思って、実家から一番近い早稲田を選んだんです。(笑)

大学を選ぶ上で文学部は将来を考えたらあまり選ばないと思うんですが、他の大学よりも早稲田の文学部は幅が広いんです。それで面白いと思って。外国語を学ぶなら、中国語かロシア語かなと思ったんです。結果、第二外国語はロシア語を選択しました。その後、ロシア語が面白くなってきたので三年目に一類から二類への転類試験を受けたんです。ロシア語にはいい先生が揃っていましたし、ロシア文学に関しては早稲田は当時日本の最高の文学者が揃っていたんです。面白かったです。

—-なるほど。大学時代は勉強一筋でいらっしゃったんですか?

普通は勉強しないと思います。でもたかが4年です。人生何十年と常に勉強でしょう?それに比べれば4年なんてと覚悟を決めて勉強しました。コンパというのは一度も行ったことはありません。朝からずっと学部の授業全部受けていて、授業後は語学研究所にも行き、他の外国語も4年間ずっと取っていました。社会科学研究所も毎日行っていましたしね。人生で1回くらいちゃんと勉強しようと思ったんです。ロシア語の会話の授業があって朝一番で始まるんですが、3回目くらいから誰も来なくなりました。誰も来なくて殆んど1年間1人で授業受けました。でもテストがあるでしょう。そしたら会場に200人来てた。(笑)

—-(笑い)露文はモラトリアムな人が多いイメージがありますね。そういう意味では露文の中では珍しいですね。

自分の経験だけでから言うと、大学時代はとにかく二度とない。小学生は次に中学生があって、高校生には大学生がある。でも大学生は最後です。悔いのない勉強をする良い機会だと思います。

勉強も遊びもというのがいいかもしれないけど、時間が足りなくなります。両立するのは難しい。だからある期間限定でもいいから、「この一年は」というのでも構わないから、この勉強を突き詰めてみるっていうのを一回やってみるというのもいいんじゃないかと思います。自分がどこまで勉強できるかを試す最後のチャンスなんです。


■勉強は社会を意識することが必要


むかし平凡社のペーパーバックでロシア文学全集が70冊くらい出ていて、全部読みました。読んでも結局、今も文学はわからないんですが、でもそういう経験が大事なんです。集中してやる。そうしたらできるようになるんです。いつの間にかできるようになる。ゆるゆるやったらだめで、これだけの間にこれだけのことをやると決めて実行するんです。それが社会で何が起きてるのか自分で察知できる能力を身につけることに繋がるんです。

いい成績を残すことで良いこともあったんですよ。大隈奨学金をもらって学校にお金は一銭も払わなくて済んだんです。(笑)もらおうと思ったのではなく、結果的にそうなったんです。結果論ですね。一生懸命勉強しようという志の結果、お金の節約ができて他に使えるようになりました。そういこともあって、学校に行くのなら徹底的に勉強すること。ラストチャンスなんですから。

私は仕事をリタイアしたらまた勉強したいと考えています。日本よりも海外で勉強したいと思っています。勉強することは本来とても楽しいことなんです。それが分かるまで勉強することですね。

—-社会に出て、学生の時の勉強が役に立った事はありますか?

学校の勉強は社会に出て直接役に立つことは一つもないないというのが正しいけど、勉強することで人間形成とかモノの考え方を学ぶという役には立ちますね。学校でロシア語だけやってロシア文学だけテストを受けるのとのと比べたら、ずっと社会の入り口の勉強になったと思います。いろんな人とのお付き合いとかね。特に当時、早稲田は五木寛之さんはじめ芥川賞や直木賞作家を輩出していたんです。そういう大先輩がたまにやってきてくれて懇親会というのもあったんです。その後NY在任中に五木さんとお会いしたんですが、そういう場を持つことのきっかけが学生時代にありましたね。

それと、四の五の言いながらも結局社会の中でで生きていかなくてはいけないんですから、多様な講義を聴いたり人の声を聞くといった社会との接点をどう持つかを学生時代から勉強すること、そういうのが大事だろうと思います。勉強は必ずしもビジネスを意識することはないですが、社会を意識することは必要です。

公開講座とか大学院とかの講座もありますよね。そういうのを聞きに行く心構えが必要なのではないかな。もっと言うと、学科の中にそういう講座を作ってもらうのもいいんじゃないかと思いますね。

直接関係ないですが、ロシア駐在時にはボリショイ劇場とかも当時はすごく安く、3ルーブルくらいで一番いい席が買えたんです。千円くらいかな。私はボリジョイの「白鳥の湖」は100回以上見ました。NYでも見ましたし。バレエは200回、オペラは100回くらい見てるかな。もちろん長い間にですよ。そういう楽しみ方もできるようになるんですね。外でいろんな方とつきあえるようになると。


■人生の成功は充足した生活がどれだけできたか



私は語学研究所の4年間、毎年言語を変えたんです。ギリシャ語イタリア語ポーランド語それと英語。1年ごとに変えたんです。だからもちろん堪能になるわけではないけど、そこに勉強に来る友達ができるそういう人たちと接点ができます。それと社会科学研究所にいくと、違う分野でのまたそこで別の接点ができます。

遊ぶのもいいけど、やっぱり基本は何かつかんで学校を卒業しないとまずい。学生時代は友人をつくるのが大事とみんな言いますね。しかし早稲田生は何千人もいるでしょう。卒業後は全国に散らばってしまう。だから、それよりも学外とか社会に出てから友人をつくるのも良いと思います。一般論とは違うかもしれませんが、あまりこういうことを言う人はいないでしょうが。そういう人生の組み立て方もあると思います。

—-それがいい結果となってビジネスで大成功された訳ですね。

人生ってね、成功というのは会社のポストとかお金とかじゃないと思います。充足した生活がどれだけできたかです。給料は多いほうが良いけれど、それだけではないでしょう。打ち込むものがあったとか、非常に楽しい時期を過ごしたとか、いい友人ができたとか、そういうことの集積ですよね、成功とは。でも人生は設計しただけでは完成しないし、努力だけでも十分ではない。これをやれば必ず成功するということがあれば皆やるだろうけどそれもない。なかなか難しいですね。

—-なるほど・・・。

しょせん自分だけで世の中生きていけませんから、他の人とどう接点を持つかを勉強することなんですね。そういう人じゃないと駄目です。外に出る人、外に対する興味をしっかり持ってる人じゃないと。外の問題を自分の問題として考えられるタイプなら、どの大学でもどの学部で学んでも仕事がしっかりやっていけると思います。

世の中を見る目を養うのが大事なんです。昔と違ってどんどん世の中が動いていますから。会社は何を勉強したかとかよりも人を見るんです。こういう勉強をしたからって採るわけじゃない。試験や面接を何度もやって、人物的にこの人だったら当社で活躍してもらえるのではないかというポイントで採るんです。会社のほうでも一人でも良い人に入ってもらいたいという願望が強いんです。だから社会性のない人は難しいですね。

学部はたかが4年です。会社人生で20年30年培っていくものって結構大きいんです。外の世界にいっぱい勉強できるチャンスがいくらでもあるんです。そういう外の世界があるっていうことを学生の皆さんにわかってもらいたい。私が自分で経験したようなことを短時間で説明するとすれば、そういう外の世界もあるということを言いたいですね。ずいぶん見る目が違ってくると思います。

<2へ続く>

1 RESPONSES TO インタビュー第2回・IHI副社長 昼間祐治さん<1>

  1. Yuko Yasutake 2011年2月6日 at 6:26 PM

    拍手! 私は生活費を稼ぐのに忙しくて学業がおろそかになり、露西亜科卒業とは恥ずかしくてとてもいえないありさまです。そのかわり、主張していらっしゃる「どこまで勉強できるか」はカナダの大学で経験しました。まだ日の丸を背負っていた世代で、日本人として恥ずかしい成績はとるまい、と心に決めた結果勉強せざるをえなかったのですが、そのときの蓄えのおかげで今日まで来ているように思います。まさに同感。親の脛が太い人は、思いっきりかじって、その分勉学にいそしむべきだと思います。カナダに来る若い方々は申し訳ないけれどあまい。勉強しなかった私でさえ、本だけははるかに多く読んでいました。昼間さん、どしどし経験をお話になってどうか若者の啓発をお願いします。海の反対側で、日本はまだなんとかなる、と信じています。

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