ミンスク(ベラルーシ)留学体験記 (2013年秋〜)

露文コース2年に在籍中で、現在、ミンスク大学に留学中(もうすぐ帰国されます)の柴田賢さんが、体験記を送ってくださいました。日本ではあまり馴染みのないベラルーシの社会や生活を垣間見れる、興味深い、読み応えのあるエッセイです。今後、ミンスク大学へ留学を考えている人はもちろん、そうでない人も、是非、ご一読ください!

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*ベラルーシ留学

こんにちは。ベラルーシの首都ミンスクに留学中の柴田と申します。
ベラルーシ語とロシア語という二つの国家語を持ち、日本ではなじみのない不思議な国。どんな国なんだろう?その不思議さに惹かれてベラルーシに来 て、早くも9か月が経ちました。ここまで平穏にすごせたのもお世話になった先輩や皆様のおかげです。というわけで、僕からも留学先の情報をレポートさせて いただきます。

*ベラルーシ・ミンスク・生活

首都ミンスクは人口の大きさでいえば札幌くらいの都市ですが、人が多いわりに街の規模は大きくありません。
ミンスクには買い物ができる場所は一通り揃っています。物価の水準はロシアより低く、市内交通機関が1回3700ルーブル(約37円/2014年 6月現在)、じゃがいも1キロ60円など、暮らしやすいといえます。ただしインフレがかなり深刻で、僕がミンスクに来た9か月前は交通機関は2500ルー ブルでした。日々物価の上昇を感じます。アベノミクスの日本とは対照的というわけです。また、EUからの輸入品は日本並かそれ以上の値段だったり、ウクラ イナ情勢やその他諸々が重なって豚肉が値上がりしたりと、物価は不安定です。
街の治安も気になる点ですが、ミンスクの治安はロシアと比べてかなり良いと有名です。最低限の注意は必要ですが、僕自身は今まで特に危ない目には遭っていません。街が清潔なのも有名で、隅々まで掃除が行き届いています。
人の性格に関しては人それぞれだと思いますが、周辺国と比べ静かな人が多いという印象です。ついこの前、ホッケー世界選手権が開かれて多くの外国 人がミンスクを訪れました。特に目立ったのがロシア人。広場で踊り狂ったり叫んだりしている人たちを見て、「ほらこれがロシア人」と友達が言っていたのが 印象的でした。ステレオタイプという意味では、ベラルーシとロシアは区別されています。
ベラルーシはEU諸国(ポーランド、リトアニア、ラトヴィア)、ウクライナ、ロシアと国境を接しているので、地理的に旅行がしやすい国です。ベラルーシから出国する場合、マルチビザか出国ビザをミンスクで申請する必要があります。

*大学・授業

ベラルーシ国立大学(БГУ)文学部で勉強しています。交換留学の場合、学部を選ぶことができるようです。
今は留学生用のロシア語、ベラルーシ文化(ロシア語)、ベラルーシ語の授業を受けています。時間割は学期ごとに変わります(秋・春の二学期制)。 ロシア語の授業は文法、音声学、会話など分野別に分かれていて、それぞれ別の先生が担当します。合計で7人の先生にロシア語を教わりました。いろいろな先 生の話し方を聞くことは大事だと思います。それぞれの先生が独自のメソッドを持っているので、方向性が偏らないという意味でも複数の先生に習うメリットは あります。
ベラルーシ語はマンツーマン授業です。教授言語はベラルーシ語で、たまにロシア語で説明してもらえます。最初は本当に何を言っているのかわからず授業はカオスな様相を呈していましたが、今ではほぼすべてわかるようになりました。
授業に関しては交渉でレベルや内容を決められるので、語学以外の授業を取ることもできるはずです。

*ロシア語・ベラルーシ語

ベラルーシは、ベラルーシ語・ロシア語の二言語体制の国です。かなり大ざっぱにいうと、ミンスクでは会話や広告はロシア語、交通機関の案内(掲示や放送)はベラルーシ語ということが多いです。
ロシア語留学の場合、ロシア語の訛りを気にする人が多いですがご安心ください、ミンスクの訛りは強くありません。少し発音に癖のある人もいますが、外国人学習者としてはまず無関係なレベルです。
ベラルーシ語はミンスクではメトロやバスの放送を除いて聞く機会は少ないですが、日常的に使っている人はもちろん一定数います。文学部の先生はベラルーシ語も話す人が多いです。
テレビやラジオはロシア語、ベラルーシ語どちらもありますが、ロシア語の放送が多くなっています。
こうして一見すると生活言語としてはロシア語が優勢です。ではベラルーシ語を学ぶ意味は?ということになりますが、現代文学を含めたベラルーシの 文学の大部分はベラルーシ語で書かれています。文学部生としてベラルーシ語を学んでいてよかったなと思うのは、文学や歌を理解できた時です。代表的なベラ ルーシ作家は主に詩人で、20世紀初頭のヤンカ・クパーラ、ヤクープ・コーラスが最も有名です。彼らの作品ではベラルーシの自然が重要な働きをするので、 ベラルーシ語を勉強すると、なぜか日本語ですら知らない動植物の名前に詳しくなってしまいます。
ベラルーシ語を学ぶ留学生は少ないです。だからこそ、ベラルーシ語を少し話すと目立ちます。留学生が目立ちすぎるのも良し悪しですが、言葉の知識は多ければ多いほど現地人とのつながりを築くきっかけにしやすいと思っています。
ちなみにベラルーシ語はウクライナ語に非常に似ており、ロシア語やポーランド語との共通点も多い言語です。ロシア語が分かればベラルーシ語の文章 はわかるような気がしてしまいますが、実は知識なしには理解できません。同じ綴りの単語でも意味や性、ウダレーニエが違ったりするのが深いところです。

*ТРКИについて

ロシア語留学の仕上げとしてロシアのТРКИを受けようという方は多いと思います。ベラルーシでは残念ながらこの試験はポピュラーではないよう で、知名度も低く受けられる場が限られてきます。僕はБГУではない大学で受験しましたが、手続きが少し大変で苦労しました。受験料はモスクワより高くな るようです。

*寮について

БГУは市内にいくつも寮を持っています。僕の寮はリフォームされていて必要最低限のものもあり、特に困りませんでした。シャワー、トイレ付のブ ロックに二部屋、一部屋の定員は3人です(やや窮屈)。僕のブロックは入れ替わりが激しく、韓国人、ロシア人、ドイツ人、日本人、ベラルーシ人が出たり 入ったりしていたのでにぎやかでした。

*留学の感想、まだ終わってないですが

まだ留学は終わっていないので、ここに留学で変わったことは何かというのを書くのもきまりが悪いものですが、僕はこの9か月の間に、男は黙って実 行あるのみ!不言実行!というのをやめました。とにかく、あれをやりたいこれをしたいと周囲にアピールしてみることからすべて始まる、ということがこの国 ではあると思います。そういう場面でいろいろな人のお世話になったので感謝もしています。
振り返ってみると、結果としてはベラルーシでしかできない留学になったかなと思います。一年でできることは留学前に考えるほど多くはありませんが、予想外に得られたものも多くあり、現時点ですでに充実した留学になったと思っています。
ちなみに、ロシア語、ベラルーシ語という二つの、しかも似通った言葉を同時に学ぶのはなかなか骨の折れる作業です。ロシア語の授業の直後にベラ ルーシ語のコマが入っていて、ベラルーシの田舎言葉の発音になってしまったりします(でも、ロシア語にベラルーシ語が混ざることはあまりない)。ロシア語 とベラルーシ語が混ざってしまう田舎の人の気持ちもわかる、と僭越ながら思ったりするものです。
先日、朗読や音楽を披露する文学部の文化祭が郊外の風光明媚な詩人の生地で開かれて、文豪バグダノーヴィチの詩を読んできました。ささやかな朗読 を学生や先生に聞いてもらい、どうせならベラルーシでしかできない留学にしたい、と思ってきた自分にとってとてもうれしい体験でした。

露文コース2年 柴田 賢
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