モスクワ留学レポート

露文教員の坂庭です。モスクワ大学に留学中の露文修士、中井瑤子さんがレポートを送ってきてくれましたので掲載します。

図書館の利用方法や美術館、博物館に関する情報(ロシアならではの博物館も!)など、留学を考えている人には有益なお話が盛りだくさんです。2枚目の写真は、モスクワにあるマヤコフスキー博物館! 実り多い留学になったようですね。

私がモスクワ大学に留学してから、すでに9カ月が過ぎようとしています。もはやロシアという国に対して当初抱いていた恐怖感は薄れ、すっかり日常生活に慣れてしまいましたが、ロシア語・ロシア文化の深遠さに対しては、現在でも日々新鮮な驚きと感動があります。

以下、モスクワにおける留学生活についていくつか皆様のご参考にして頂きたい情報をお知らせいたします。

・授業について

私は大学院修士課程に属していますが、交換留学先のモスクワ大学では、学部生の方々と同じように、アジア・アフリカ研究所に所属の上文学部の預かりというような形で(このあたりは少し複雑です)、外国人向けのロシア語学習コースにおいて学んでいます。

基本的に授業はロシア語の文法・読解・発音などの語学学習が中心で、その他「ロシア・アヴァンギャルド」「ソ連時代の映画」等のテーマに分かれたセミナールで其々興味のあるものを選択して学ぶことができます。

到着してすぐにレベル分けテストがあり、その結果によってグループを決められます。グループごとに時間割が自動的に決まっているので、履修登録等は必要ありません。グループごとにかなり学習レベルに差があるので、自分のレベルに合った授業を受けられると思います。基本的にはТРКИの対策も授業に含まれるので、受験しようと思っている方は担当の先生にあらかじめその旨伝えておくといいと思います。

・資料収集について

おそらく卒業論文・修士論文等の資料を集めるために留学される方も多いかと思います。私の場合、専門が20世紀初頭のロシア文学だったので、古本屋と図書館がおもに資料収集の場となりました。

モスクワはどんどん古本屋の数が減っているようで、当初は自分が必要とする本を半分も集められないのではないかとひやひやしました。結局、インターネット上の本屋ozon.ru が一番私の必要とする範囲の本を売っていました。が、古本屋の魅力は思いがけない本と出会うことです。つい買いすぎてしまう危険性もありますが、他の留学生の皆さんと情報を共有しながら、色々な古本屋を巡ってみると楽しいと思います。

図書館はおもに国立図書館を利用していました。ここは日本でいう国会図書館のような場所で、貸出はありません。資料を申請して受け取り、必要箇所をコピーしてまた返却する、というシステムです。近代的な検索システムもありますが、ずらっと並んだ蔵書カードをめくるのも楽しいです。パスポートがあれば、誰でも読者カードを作って入館できますが、本(辞書含む)の持ち込みは禁止です。

・美術館、博物館、劇場等について

モスクワは今やロシアの「芸術の中心地」であると言っても差し支えないと思います。トレチャコフ美術館をはじめロシア美術の粋が集まるほか、プーシキン記念美術館のような世界中の名作を収蔵する美術館もあります。また、現代アートの美術館やギャラリーも多く、今現在ロシアや世界で起こっている現象を体感することができます。美術館以外にも、宇宙博物館や核シェルターの博物館、ウォッカ博物館など、ロシアならではの博物館もたくさんあり、学生証があれば無料に近い料金で入館することができます。

そしてモスクワの魅力はなんといっても劇場です。ドラマ劇場でゴーゴリやチェーホフの演劇を見るのも楽しいですが、世界に名だたるボリショイ劇場や日本でも人気のスタニスラフスキー・ダンチェンコ劇場などの音楽劇場で、本場のバレエやオペラを鑑賞することができるのは、留学期間の最大のご褒美だと思います。劇場の他コンサートホールも多く、ほぼ毎日何らかの劇やコンサートが行われており、モスクワは非常に文化水準の高い都市だと言えます。

・日常生活について

日本に比べれば苦労することも多い留学生活ですが、日常において不便を感じることはあまりないと言えます。私の住んでいる寮は本部の建物の中にあり、文学部にも近くセキュリティも万全で、少々古くて汚いことを除けば非常に快適です。スーパーでは米や醤油も買えますし、寮内にある売店で肉や野菜も購入できるので、食に困ることはありません。自炊が苦手な方には、寮内の食堂やカフェで事足ります。折からの日本食ブームで和食系レストランも非常に多く、東京よりも頻繁に寿司の看板を目にするほどです。正統な寿司とはまったく違うロシア流の寿司に、最初は拒否反応を起こしていましたが、今ではすっかりロシアの味に慣らされ、日本では箸もつけないであろう「チーズ入り揚げロール寿司」まで喜んで食べている有様です。ただし、外食は非常に割高です。

メトロも夜の1時近くまで走っています。ただ、日本に比べて治安はとても悪いので、夜間はひとりで出歩かないほうが無難です。メトロの駅では常に集団の警察官がうろうろしていますが、いつも暇そうにおしゃべりしている彼らがまともに働いているところを見たことがありません。しかし、外国人というだけで難癖つけられなくなっただけマシかもしれません。

ロシア人については、お店の人や窓口の人は驚くほど不親切ですが、一度友人になれば驚くほど親切です。最近はロシアのイメージの定番である「浴びるようにウォッカを飲む若者」もあまり見かけませんし、価値観の違いはあれどロシア人も日本人もやはり同じ人間だなと思っている矢先に、車体の1/3を失った自動車(のようなもの)が平然と道を走っていたり、売店のおばさんにおつりが足りないからと飲めないコーヒーを無理やり買わされたり、サッカースタジアムの応援席が延々と赤く燃え上がっていたりするのを見て、自分の未熟さを痛感し再び考えを改める、という繰り返しの日々です。

最後に、9か月を終えて一番感じることは、とにかく時間の流れが速いということです。あれもしたい、これもしたいと思い描いていたことをすべて実現するためには、相当の努力が必要です。私自身、もっと有効に時間を使えばよかった、と既に後悔している部分がたくさんあります。大切なことは、最終的な目標に沿って優先順位をきちんと決めておくことだと思います。

私のモスクワ留学はとても刺激的で、うまくいかないことももちろんありましたが、日本での想像を軽く超える、まるで夢のように充実した日々でした。何よりも、ロシアに来たことによって多くの友人や先生と知り合うことができ、その出会いは私の人生に新たな価値観をもたらしてくれました。また研究においても、貴重な経験を積むことができたと思います。

しかし留学とはそれ自体が事件なのではなく、そこから何を得て帰るかが重要だと思います。実際に私自身、モスクワに来て新しい友達もたくさんできて、授業も楽しく、行きたい展覧会や見たい劇もどんどん増えていき、留学生活に浮かれて目的を見失いかけたことがありました。しかしそこで最初に設定した目標に立ち返り、やるべきこと・やりたいことに優先順位をつけてコントロールしたことによって軌道修正でき、今ではまだまだ未熟ながらもなんとか、今回の留学を有意義なものとしてまとめられそうです。

教訓めいた内容になってしまいましたが、私にとってはロシアへの留学というチャンスをつかめただけでも幸せなことでした。今回私が留学するにあたってサポートして下さった方々に少しでも恩返しできるように、残りわずかな時間も無駄にせず、少しでも多くのものを得て日本へ帰りたいと思います。

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